アイヌの手仕事はなぜ美しいのか?
友達のお母さんがアイヌの作家さんだということが発覚し、さっそく展覧会にお邪魔しました。
北海道の白老町に所縁のある作家さんが集まる展覧会です。
入場して作品の数々を眺めているとアイヌの手仕事を見ていつも感じる、「美しい手仕事だな〜」という感想を今回も感じます。なぜそう感じるのでしょうか?
美しく感じる理由は、制作の背景を感じ取れるからでした。
今回はなぜアイヌの手仕事を美しいと感じるのか?を深掘りしてみます。
カーブが美しい
まずはカーブが美しい。自分で刺繍や縫製をやったことある人はよくわかると思うのですが、刺繍ならまだしも、この辺のカーブを生地(布)で表現するのは非常に大変です。
しかもよく見ると縫い代内側(裏)に折り返している!!
切りっぱなしじゃないですから。そして外側をかがって留めている、、手で。
刺繍の前の下準備にもかなり手間のかかる仕事。かなり激しい仕事です。
すごく大変。これ。
スペースの埋め方美しい
スペースを埋めるために刺繍をする際は通常、綾や(斜めに)とか古いモノだとチェーンでグリグリ埋めていくのが普通の刺繍のセオリーですが、アイヌ刺繍では独特の刺繍の方法で網目にスペースを埋めています。
これも大変な手刺繍ですねぇ、、
ヤバス
これはチェーンでグリグリと似てる。
幾何学模様が美しい
カーブが美しいことも特徴的ですが、直線を活かした「幾何学模様」も美しいです。
自然界には存在しない、「直線」を表現した幾何学模様。2色で表現されることが多いこれらの柄は、少しモード感も漂う現代にも通じる美しい柄です。
気づいてしまった。
アイヌ工芸作家の「河岸麗子さん」が手織りのワークショップをされていたのですが、織られていたいた幾何学柄と筆者がその昔、ラオスの市場で購入した少数民族の手織り生地の柄が、どことなく似ている、、、
うーんプリミティブ!
時代も、文化も、距離も全く違う場所から同じ様なアプローチの作品がよく発見されるパターンですね、これ。1人で勝手に感動です。
プリミティブな記事はこちら↓
木彫りを突き詰めると原始的なものになる話
すいません、ちょっと脱線しましたが、、
裏面も美しい
裏面も美しい。
表面はもちろんですが、裏面も美しいのがアイヌ織、刺繍の特徴です。手仕事でこんなに綺麗にやれるんですね。自分が手刺繍に挑戦した時なんて、裏面は見れたモノではありませんでした。
表と違わず、美しい。手刺繍ですよ?これ。
絵のようだ。
魔除け美しい
アイヌ工芸作家の河岸麗子さんに教えて頂いて初めて知ったのですが、刺繍のはしのトンガリは「魔除け」の意味らしいです。
柄の端をわざと尖らせ悪いものの侵入を拒む意味があるそうです。
たしかに柄はしで必ず尖らせているのはそのためだったのですね!
うーん細かい。納得の宗教観、死生観から来る紋様美しい。
結論
気の遠くなる作業をすべて手作業でやっているのを想像できるので、人の約5倍美しく感じる
もちろん何も知らなくても直感的にアイヌの手仕事は美しいのですが、なんで美しいのか?考えていたら
「自分的にすごいと思うこと」
の蓄積で「より美しい」と感じている事に気づきました。
原料の調達・加工/原価(コスト)/作業工程/実働時間などがなんとなく想像できる筆者はおそらく普通の人の5倍くらい美しく感じているかもしれません。
もちろん機械でやればもっと美しくは出来ます。ただ手仕事のように「少しのムラ感やズレ感」が狙って出せません。
「ミシンもない/針は交易で手に入れる/糸は草木を撚るといった、そもそも何もない時代」
に思想や信仰を表現しようとした手仕事の伝統・継承がビンビン伝わって、より「美しく」感じているという事を理解しました。
今日も感動をありがとうございます。
麗子さん色々教えて頂いてありがとうございました。 「アイヌ文化は口語伝承で文字で残ってないので、教える人によって正しいが違う」 が非常に腹落ちしました。もっと教えてください!w
出典:公益財団法人 アイヌ民族文化財団
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