お土産にとどまらない木彫りの熊5選

デザインとアート

北海道土産の定番木彫りの熊

シャケを咥えた黒光する木彫りの熊、昭和を席巻した北海道の定番土産で昔はどこの家庭にもありました。(主におばあちゃんの家)

現代では古臭く長いこと見向きもされなかったこの木彫りの熊ですが、実は品種が多岐に渡り、お土産とは違う独自の進化を遂げています。

今日はそんな魅惑の「木彫りの熊」のご紹介です。

ルーツは北海道八雲町

出典 八雲町公式HPより

木彫りの熊の歴史は、第一次世界大戦が起こった頃まで遡ります。

当時、八雲町ではじゃがいもを栽培して片栗粉を製造し、ヨーロッパに売る産業が盛んだったのですが、戦争が終わったことでヨーロッパは自国で片栗粉を作るようになって八雲町の片栗粉は売れなくなってしまいました。

出典 Hokkaido Magazine KAIより

戦後の恐慌もあり、経済的に困窮した状態になっていました。

そんなときに、八雲町で『徳川農場』を経営していた尾張徳川家の当主、徳川義親がヨーロッパ旅行に行き農村などを観察し2つのものと出会います。

一つはデンマークの酪農。もう一つがスイスのペザントアートです。

「ペザントアート」とは、農民美術という意味です。農民がオフシーズンにする副業としてスイスでは広まっていました。

工芸品を作ってそれを土産として販売する。そしてこのペザントアートが木彫りの熊のはじまりでした。

初期の木彫りの熊

這(は)い熊   制作者:八雲農民美術研究会会員  制作年:大正末~昭和初期

初期の木彫りの熊は定番のシャケを咥えていません。なんなら狸っぽいです。

出典 Hokkaido Magazine KAIより

北海道土産として木彫りの熊が人気になったのは昭和10年前後の第一次観光ブーム。

この頃は八雲の木彫り熊もたくさん売れいて、一方でアイヌの木彫り熊も有名になり始めたのもこの頃。

第二次世界大戦後の昭和30年代からの第二次観光ブームでは、新婚旅行などで北海道に行き、食べ物のように腐ることのない工芸品(昔は鉄道での移動も多く時間が掛かり、保存が難しかった)がお土産としての定番になりました。

とにかく大量に作らなくてはならなくなったので、彫り師の手作業ではなくマシーンを使って一気に彫っていたようです。

魅惑の木彫りの熊

さて、そんな歴史のある「木彫りの熊」ここからは著者が好きな熊をご紹介します。

熊マスク

出典 トミヤ郷土民芸HPより

熊の顔部分だけの木彫りの壁掛け。量産されていたので比較的入手しやすいです。目がガラスのものや大きさも様々ですが巨大なものだと現代の住宅事情に合わず壁が重みで破損する危険があるので小さめが良いですね。

物によって繊細なものや彫りの荒いもの、色々あります。お好みでどうぞ。

面彫り(ヴィンテージ)

出典 Hokkaido Magazine KAIより

手斧で木を割っただけのような面彫り(柴崎彫り)で独特の作品を作った八雲町の作家「柴崎重行」氏の作品。強烈にモダンです。

入手困難で販売価格も強烈です。作品によっては50万位します。

出典 Casa brutus HPより

八雲の作家、引間二郎氏の作品。事故により足を悪くした引間は「木歩」という号を用いていました。この作品のような切り出しナイフを用いる「カット彫り」は、引間独自のスタイルです。ビビるくらい高額です。

面取り(現代版)

出典 高野夕輝  Takano Yuki公式HPより

十勝地方の鹿追町で、木彫り熊の制作を行う高野夕輝氏の作品。八雲の熊を研究し、独自の世界を切り開いた熊はモダンインテリアとの相性もよく、高い人気を博しています。

座熊

出典 Casa brutus HPより

胡坐をかいて腕を組んで座っている座熊(加藤貞夫氏作)。面で彫られたものだが座熊は他にも多数存在していて1つの形のジャンルにもなっている。入手困難。

擬人化

出典 熊乃屋阿野みやげ店Instagramより

熊に楽器を持たせたり運動をさせたり人間のような姿に彫った熊。スイスから伝わった八雲の熊のスタイルの1つになってます。スキーはヤバいですね。こんなのが滑って来たら恐ろしいです。

結論

木彫りの熊はモダンアートだった。

元々は農民の副業から始まった木彫りの熊。時代的な背景もあり、大量生産、画一的な方向へ行った人達もいましたがその中で美しさを見出し、彫刻として独自の世界観を作ってきた人たちがいました。

また現代でもその思想を継承しながら新しいものを生み出そうという流れがあり、非常に刺激的。

おばあちゃんの家に置いておくのは勿体無い、進化していく文化でもありました。

木彫りってなんか古臭いイメージであまり興味がなかったのですが、「ニポポ」をきっかけに木彫り文化に興味を持ち出して自分でも出来そうだなと思い、彫刻刀を購入し彫ってみました。

全くイメージ通りにいかず、すぐ捨てました。自分でやってみると、この木彫りたちがどれだけすごいかより分かりますので試してみるのも面白いですね。

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