漫画のゴールデンカムイが完結しました。
2022年4/28日(木)アイヌ民族漫画の金字塔、そして当時の生活様式を知れるバイブルともいうべき漫画、「ゴールデンカムイ」が完結しました。
無事最後までの完結を祝いつつ、漫画中の重要な場面で何度も登場した網走刑務所の歴史に触れるべくお邪魔してみます。
いざ、網走刑務所へ
札幌から約5時間。日本最北端の刑務所で、映画「網走番外地」でもお馴染みの網走刑務所に突撃しました。
ここで注意点を
・網走刑務所と博物館網走監獄は別物。
・網走刑務所は現在も使用されている現役の施設。網走駅にほど近い
・博物館 網走監獄は天都山のふもとに移築保存されている。
筆者は間違って現役の網走刑務所の周りをぐるぐるしてました。これは不審車両なので要注意です。
公開している歴史的建物は「博物館 網走監獄」です。
そんな網走監獄には機能を突き詰めたらこう言う形状になったんだろうな、と思う造形がたくさん有りました。それらのデザインが美しいので紹介します。
外観が美しい
この建物は木造平家建、中央見張所を中心に側面から後方に放射状に建つ五つの舎房からなり、間を渡り廊下で接続しているため「五翼放射状房」と呼ばれている。
出典:網走監獄公式HPより
これが中央の見張所。全方位を見渡せます。
建物自体が放射線状に建てられ、中央の見張所から全方位即座に見渡せる様に作られています。
脱獄を防ぐ目的の造形ですが、現代にこの放射線状の建物を建築しようとするとスペースを取りすぎるという問題も発生し、中々見られない造形で美しいです。
舎房の内装が美しい
明治45年に完成した庁舎や舎房には網走で最初の電気の灯がともったのですが、当時の電力や、照明設備は最先端でも薄暗かったことが容易に想像出来ます。
また、網走の冬場は日中でも薄暗く、採光設備が必要でした。大きな建物に少しでも光を入れる為にいたる所に「天窓」が付いていて溢れる光が舎房内を照らしています。
これは美しい。
舎房の格子が美しい
舎房の格子は工夫されていて、平行四辺形断面もしくは「く」の字形断面の格子になっています。
廊下を歩く看守からは中を簡単に見ることができるが、囚人側からは向かいの囚人が見えないようにできています。
また、暖房をたいたときに舎房に熱が入るようにもなっている。シンプルだが機能的なつくりです。
木組細工にも通づる、、工芸的で美しい。
赤レンガが連なっている様が美しい
「軟石」も裏山から自分達で掘り起こし、刑務所内のサイロでレンガを焼いて作り、建物の建設も囚人が行いました。床や外壁、独房などもレンガ造りです。
西洋にならい、当時最先端の近代的な獄舎がレンガ作りでした。
赤レンガを際立たせている表面に艶のあるレンガは、窯の中に塩を入れ、塩が分解する1,160度以上の高温で焼き上げるため、独特の釉薬をかけたような黒褐色の色をしており、形も普通のレンガより20 – 30%小さいのが特徴です。
現在はこのような焼き方はできないので特殊な製法で作られています。はい、美しい。
結論
機能や使い勝手を突き詰めていくと結果美しいものが出来上がる。
当時、日本で最も近代的な刑務所を作ろうという政府の思想はあったと思いますが、刑務所に対し「美しい建物を作ろう」などとは誰1人思って無いはずです。でも美しい。
これは機能美というもので服や道具なども一緒なのですが機能や使い勝手を突き詰めてシンプルに削ぎ落としていくと美しいものが出来るという現象です。
歴史的な背景は苦役で沢山の囚人が亡くなったり、刑務所の名前が有名になりすぎたことから町から出て行ってもらおうと排斥運動があったりしましたが、建物は粛々と美しかったです。
刑務所から出所した人を“むしょ帰り”といいますね。刑務所の“刑”をとって“むしょ”になったと思ってい思っていたのですが、どうやらそうじゃない様です。
明治41年に監獄法ができました。その中で決められている当時の囚人が食べるご飯の混合率、『麦6、米4』の、数字部分“む”と“し”がなまって“むしょ”になったんです。
それで、刑務所という呼称のなかった明治のころから“むしょ帰り”と言う言葉はあったのです。へー。
そんな網走監獄を脱獄した男の実話を紹介します。ゴールデンカムイの脱獄王:白石のモデルは実在していました。↓
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