廃墟の街 タイムスリップを感じる?都市デザインを紐解く

デザインとアート

北海道には廃墟の街が数多く存在する。

昔は栄えていたであろう廃墟の街が北海道には数多くあります。

それらを探訪すると、どこか時間の止まった様な不思議な感覚があったり、懐かしい造形物が多々見られたりします。

放置されて朽ちていく様はどこか切なく、グッとくる、、その理由は

「繁栄と衰退」の面影にありました。

そんな廃墟の街を歴史を参考にしながら筆者の得意とするデザイン目線で考察します。

潰れた住居

・炭鉱や廃墟、工場萌えの方から

・田舎、過疎地で新しいことを模索している方

・地方行政で
もがかれている方まで


何かの参考になれば幸いです。

なぜ廃墟となったのか?

札幌から車で約1時間半の三笠市は「炭鉱の町」として栄えました。

この辺りには元々巨大な炭鉱群があり、炭鉱夫を集めるために当初は刑務所をたて囚人を全国から集め、その労働にあてて安い賃金で強制的に労働させていました。

その後、時代の移り変わりと共に炭鉱も閉山になり雇用が失われ街のあちこちが廃墟化しています。

旧奔別炭鉱(1900-1971) この立坑自体は1960年操業
石炭を積み出す施設跡 ボロボロです。
潰れた住居
廃校になった小学校 ブランコも朽ちてます

三笠市の人口の推移を辿ると

・1879年(明治12年)幌内炭鉱開鉱

・1919年(大正8年)約20000人突破。増加傾向


<人口のピーク>

・1960年(昭和35年)約63000人

<奔別炭鉱閉山>

・1971年(昭和46年)約53000人

・2022年(令和4年)約7800人    

筆者
筆者

ピークからの60年で約88%も人口が減少しています。めちゃくちゃ減っていますね。

なぜ内陸なのに化石燃料の石炭が取れたのか?

筆者
筆者

そもそも石炭がなんでこの辺では採れるのか?その理由を調べてみました。

・白亜紀(約8000万年前)の北海道はアジア大陸と一体になっていた。

・その海岸線に沿って「蝦夷層群」が堆積 (堆積したのは動植物の遺骸=石炭)

・その後1600万年前に日本列島がアジアから分離。

・100万年前に現在の日本列島の形に。

三笠はアジア大陸の端でした。

三笠にはこんなに炭鉱がありました。

出典:三笠市立博物館より

要するに、アジア大陸の端の海岸線だった三笠を含む「蝦夷層群」から石炭が取れるという事ですね。

筆者
筆者

この辺が昔は海だったという事です。現在は完全に山の中ですけど、、

炭鉱施設の抱えるさまざまな問題


↓こんなアリの巣みたいな構造ですので地下で落盤でもしたら、どうにもならないですね

出典:三笠市立博物館より

炭鉱施設を運営していく上ではさまざまな問題がありました。

刑務所から囚人が逃げまくる問題

・当初から刑期10年以上の重罪犯を収容していたため凶悪犯の脱走が絶えなかった。

・脱走したものは逃走途中に開拓地を襲い、開拓民に大きな被害を与えていた。

・空知集治監(刑務所)は1882年〜1892年の10年で376名の逃走者が発生。

・逃走成功者は123名。33%が逃走に成功。

筆者
筆者

刑務所がザルで脱走が容易すぎますね、、

炭鉱では事故が起きまくる問題

・記録が残っている1885年〜1975年(90年間)まで三笠市内の炭鉱で発生した事故の死亡者は263人死亡。

・坑内では天然ガスが噴き出しているにもかかわらず、喫煙で発火、爆発している。

・本来は安全を守るための安全灯や電気から火花が出て、爆発、落盤。

・1975年閉山作業中にも発破が原因で火災発生。最終的に中に人がいるまま坑内注水を実施。24人死亡

予備知識や教育が行き届いてなかったのでしょう、タバコが爆発の原因って安易なように感じますが数多く起きています。

筆者
筆者

毎年事故がある、非常に危険な仕事だった事がよく分かります。すぐ爆発、火災、落盤、生き埋めになります。過酷すぎる、、

時代に合わなくなってきた問題

・効率を上げるため深く掘ると坑内温度が上がり、大規模な事故が発生しやすくなった。

・輸送や貯蔵が楽で発熱量も大きい「石油」が当時割安だった。

・二酸化炭素排出量が多く、地球温暖化の一因となる事が広く知られ始めた。

もともと石炭は国産エネルギーとして戦後の経済復興に重要な存在だったのですが、徐々に時代と合わなくなってきます。

筆者
筆者

日本が戦後から復興して経済が安定してくると効率や安全、環境などもっと先進国に追いつこうという思想になって来る事がよく分かります。

廃線になった唐松駅から線路をみると緑地になっていました。

結論

廃墟デザインが時間が止まった様に感じるのは繁栄と衰退を同時に感じるから。

廃墟を探訪していると巨大な炭鉱や、街全体、区画全体が廃墟、廃線になった駅などエリア全体の規模感が大きい事がよく分かります。

そこには過去に多くの人たちが暮らしていた事がよく感じ取れます。

そこを細かく見ていくと、繁栄⇄衰退の板挟みにあい時空にねじれが発生しています。それが時間が止まって感じる原因でした。

筆者
筆者

三笠市は炭鉱の閉山=雇用の消失が人口減に大ダメージを与え、そのダメージを修復できないまま人口が減少し続けています。

日本全体でも人口減は大きな課題ですが、炭鉱跡の街では直近の大きな課題です。

リモートワークにもってこいの広い住居や、子育てしやすい政策とか見かけますが、

まずお父ちゃんの仕事なんとかしないとその地で生活がそもそも出来ないと思います。

街に仕事がなくなるとその街で生活が出来なくなる。そして皆いなくなる。

廃墟の街には「回春堂」がありました。いつの時代も老いから若返りたい気持ちは一緒なんだな。

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